現在の日本は、ほとんどの企業が「週休2日」の制度を設けています。そうした中、「週休3日制」の導入が議論され、その普及がおこなわれることになりそうです。この背景にあるのは、少子高齢化による労働力不足の解消や、育児や介護などと仕事を両立させるワークライフバランスの成立。"多様な働き方"が選択できる必要性の高まりが挙げられています。そこで今回は「選択制週休3日制」について考えます。
政府は来年度の予算編成に向けた財政運営の基本方針の中に、「選択的週休3日制の普及」を盛り込んだそうです。「選択的週休3日制」とは、従業員が希望すれば、1週間に3日休日を取得できるという何とも羨ましいワークスタイルのことで、すでに実験的に導入している企業もあります。とはいえ、働く日数が減るわけですから、給与については無条件に「現状維持」というわけにはいきません。導入企業の給与形態を見ても、「週休3日制を選択した場合は約2割の減額」をプロトタイプとして、1日の勤務時間を増やせば(8時間→10時間)週休2日制と同じ給与を維持できたり、会議や報告など実務以外は最小限の時間で済ませて、週休3日でありながら給与も現状を維持したりと、さまざまなタイプがあるようです。
もともとこの制度を提議したのは経団連の元会長で、背景には大企業の人件費を削減する思惑があったのでは?などと見る向きもありました。しかし、大手人材紹介会社がおこなった選択的週休3日制に関する意識調査によると、「好きなことに費やす時間が増える」「育児と仕事の両立がしやすくなる」「介護の時間が確保しやすくなる」など、ワークライフバランスの視点から制度を歓迎する声も数多く見られました。
一方、「選択的週休3日制」に否定的な意見の多くは給与面についてです。とくに中小企業の場合は、コロナ禍のダメージが癒えぬこの時期に「呑気に週休3日なんて言っていられない」という切実な声が、経営サイドと従業員、両方の立場で数多く挙がっていました。このほかにも、シフト勤務が多い業種などは一律に週休3日を確保することが困難なため「休日格差」が生まれることが容易に想像できます。また、1日の勤務時間を増やして週休3日にしようとすれば、残業代をアテにした生活はできなくなります。
それぞれの立場で賛否両論ある「選択的週休3日制」ですが、いずれにせよ、コロナウイルスの感染状況を睨み、然るべきタイミングで国が音頭をとって広報活動が始まり、制度の詳細について企業向けの勉強会などが開催されることは間違いないでしょう。当然ながらこの制度は、導入が義務化されているわけではなく企業側の任意です。念仏のように唱えていてもなかなか進まなかった「働き方改革」を促進させることも考えられます。ただ、先にも説明した通り、「勤務時間が減れば、給与も減る」ことが前提になっているため、説明不足だと「こんなはずじゃなかった」と混乱を招くことにもなり兼ねません。「選択的週休3日制」の導入を考える場合は、検討段階で従業員の要望をしっかり聞き、合意を得ることが大事です。
■記事公開日:2021/08/04
▼構成=編集部 ▼監修=清野裕司 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=PIXTA AdobeStock