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バブルがはじけた1991 年以降の日本は、雇用環境の悪化や少子高齢化などによって、多くの人たちが自分に合った働き方を見つけて、仕事と生活のバランスをとることの大切さに気づき始めました。そこで提唱されたのが『ワークライフバランス』です。ワークライフバランスに含まれる概念は2つ。1つは、働きながら育児や介護をおこなえる仕組みづくり、そしてもう1つが、男女均等の推進です。30年以上経った今の日本はそれを実現できているのか?必ずしも胸を張って「Yes」とは言えない状況ですが、最近、「ワークライフバランスはもう古い」とばかりに、"似て非なる新しい働き方"が注目され始めています。
ワークライフバランスは仕事と生活の質の向上を意図していますが、それら(仕事と生活)はあくまでも相反するものであって、どちらかが多忙になった場合は片方を調整することでバランスを取ることが第一で、両方を同時に充実させられなくても「已むなし」という側面があります。そうではなく、仕事と生活のどちらも犠牲にすることがないように、垣根を取り払って"統合させる"ことで、双方のクオリティを高めていこうというのが、働き方の新形態『ワークライフインテグレーション』です。
仕事と生活の統合というと、私的な時間に仕事が踏み込んでくるマイナスイメージを持たれるかもしれませんが、そうではありません。ワークライフインテグレーションは、個人の希望や能力、そして責任に基づいて、働き方を自分の価値観に合わせてデザインする、多様性が求められる今の時代に"最も相応しい働き方"と考えられています。
そもそも、仕事と生活の統合ってどういうこと?と疑問に思う方も少なくないと思います。分かりやすい取り組みが裁量労働制の導入です。裁量労働制とは、一般的な会社のように、朝9時始業~18時終業と決まった時間帯で働くのではなく、その日に用事がある場合は、午後から出社してもいいし、16時に切り上げても構わない。労働基準法で定められた週40時間の勤務時間を、自分の裁量で自由に振り分けることが出来る制度です。この他にも、育児や介護などで一旦仕事を離れても復職出来る仕組みの制度化や、オフィスにリフレッシュできるスペースを設けるなどして、柔軟かつストレスのない仕事環境の構築を目指そうというのがワークライフインテグレーションの特長です。
つまり、ワークライフインテグレーションの根底にあるのは、仕事と生活は対等な関係にあって、職場環境や制度が整備されれば生活の充実につながるし、充実した生活を享受している人は仕事に対してもよりポジティブに取り組むことが出来るという、相互にプラスの影響を与え合う好循環の概念です。
ワークライフインテグレーションを実践することで、会社にとって一番大きなメリットは、長時間労働の是正だと言われています。仕事と生活の垣根を無くすためには、効率よく時間を使う(仕事をする)ことが前提になります。更に言うなら、仕事で成果を出しながら、尚かつ、プライベートな時間を充実したものにしたいなら、時間の使い方を真剣に見直すことが必要です。つまり、従業員の方々に「短時間で効率よく成果を出そう」という意識が芽生えれば、残業が減り、それにかかるコストも削減されます。
片や従業員にとっては、自分都合の時間を優先することに後ろめたさを感じたり、近年問題視されている"仕事のために結婚や出産に踏み切れない"といったことも減るでしょう。プライベートな時間を充実させ、仕事にもやりがいを持って望めることで、ストレスがなくなり、当然ながら幸福度も高まるはずです。
ただ、違った見方をすると、従業員の主体性によって仕事と生活の垣根を取り払うということは、会社が介在するタイミングや、管理することが難しくなるということでもあります。また、もともと主体性に欠けていたり、残業することが当たり前の感覚になっている人にとっては、ワークライフインテグレーションなど"有難迷惑"以外の何者でもありません。とはいえ、中途半端にルールを設けてしまえば、仕事と生活は対等な関係ではなくなってしまう。ワークライフインテグレーションの恩恵を享受するためには、個々人の意識改革が手始めなのかも知れません。
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■記事公開日:2023/02/07
▼構成=編集部 ▼監修=清野裕司 ▼文=吉村高廣 ▼画像素材=AdobeStock

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